独立行政法人国立病院機構 四国こどもとおとなの医療センター

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おひさまつうしん

コラム 臨床研修医が行く!

vol.19 瀬戸内の島々での医療体験

 はじめまして。京都から来ました、研修医2年目の人見浩介と申します。気がつけば香川県に来て2回目の冬を迎え、初期研修もそろそろ終わりに近づいている今日この頃です。さて、初期研修医には1ヶ月の地域実習が義務づけられています。そして今年の残暑が厳しい9月には小豆島の土庄町にある土庄中央病院を拠点に島医療を体験してきたので報告いたします。

 小豆島は穏やかな瀬戸内海に浮かぶ、面積153.30km3、人口30,000人ほどの島です。瀬戸内国際芸術祭で脚光を浴び、最近ではドラマや映画撮影のロケ地として使われることも多くなり、有名俳優にも会えてしまう島です。観光地としては寒霞渓やオリーブ公園、二十四の瞳などが有名です。食べ物ではやはり魚介類が驚くほどのおいしさで、是非また行きたいと思える絶品料理屋にも出会えました。

 あくまで観光ではなく研修という位置づけで行ったものですから、実際の仕事のことも少し書きます。小豆島の医療を担っている病院の1つが土庄中央病院ですが、そこでの研修内容は、月曜日は成人内科では上部内視鏡検査をさせてもらい、火曜日・木曜日・金曜日は小児科外来で初診の外来や乳児検診を担当し、水曜日には整形外科では手術に入りというローテーションでした。又、それらとは別に救急車が来れば初期対応をさせてもらい、当直にまで入らせていただきと、いろいろな部署から呼んでいただいて研修をさせていただくことができました。下調べをしていた観光地巡りを十分に楽しむ余裕もないほど目まぐるしく、バリエーションに富んだ経験を積むことができた毎日でした。忙しかったですが、つらいということは全くなく、沢山の病院スタッフの方々に良くしていただいて本当に有りがたかったです。お陰で沢山の友達ができました。

土庄中央病院小児科外来

 又、院外に出かける機会にも多く恵まれました。院長に同行させていただいて、訪問診療のため島中を回ることができたのは家庭医療を学ぶこの上ない機会となりました。各家庭に出向くことで普段院内では知り得ない家族の方々の苦労を目の当たりにし、そういった問題まで包括的に取り組む家庭医の大変さを実感しました。

 隔週で小豆島からフェリーで更に1時間のところにある豊島の診療所にもお邪魔させていただき、Dr.コトーでお馴染みの離島医療を体験することもできました。豊島は小豆島よりはるかに小さく、車で数十分も走れば1周できてしまうほど大きさしかありません。近代アートという名目でいろいろな謎のオブジェも沢山散在していますが、それはさて置き何より自然が素敵です。野生の檸檬が名物です。島の人口は900人程ですが、島民の医療はフェリー乗り場に隣接する診療所の数名のスタッフの方々によって担われています。朝には診療を受ける患者さんたちの長蛇の列ができ、その列がなくなるころには昼になっているので、そこからは孤児院や介護施設への往診があります。診療所の車で走っているといろんな方に声をかけられ、その方々と挨拶を交わしながら島を回っていると、だんだん親近感がわき、そしてなにより気持ちが穏やかになりました。

豊島往診

 瞬く間に過ぎた1か月でした。人材不足で香川大学や岡山大学、自治医科大学からの派遣でなんとかなりたっていた地域でしたが、残念ながらそれでもなんともならず、今年度で土庄中央病院はなくなってしまうそうです。今回いろんなスタッフの方々が話されていたこととしては、やはり医者が確保できないこと、そして急病の患者搬送経路が確保できていないということでした。緊急の治療が必要な場合はヘリ搬送が可能であるそうですが、日が落ちるとヘリを飛ばすことができず、高速艇で数十分かけて高松に行かなくてはいけないとのこと。しかしながら、医師が搬送にとられるとその間、院内が回らなくなってしまうそうです。なんとかもっと迅速に患者搬送ができるシステムをつくってもらいたいという風に話されていました。

 小豆島で過ごした1か月で、地域医療の良いとことも沢山体験できましたが、同時に地域医療が直面している現状についても目の当たりにしました。とは言え、今回の研修で思い入れの深い場所となった小豆島ですので、その素朴さや暖かさに触れにまた訪れようと思います。

<2014.12>

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