独立行政法人国立病院機構 四国こどもとおとなの医療センター

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おひさまつうしん

特集 こどもの病気の基礎知識

vol.08 子供の成長について

 大きく生まれても、小さく生まれればよりいっそう子供たちの毎日の健やかな成長は、まわりの誰もの喜びです。元気に大きく育って欲しいと。子供の体重の増え方や、身長の伸び方は、その子の体調のよしあしの基本的なめやすになりますが、大切なことは、大きいか小さいかではなく、ゆるやかに連続した前進が見られるかどうかです。

○成長曲線について

 お子さんの成長の様子は、成長曲線に身長と体重の変化を記録してみるとよくわかります。標準成長曲線は、日本人のこどもの身長、体重を調べて年齢毎の平均値を曲線でつないでつくったものです。集団の標準偏差値(SD)を計算すると、全体の約95%は、±2SDの範囲にはいります。身長が−2SD以下のお子さんは同じ年齢の100人のなかに2〜3人なので、このあたりから身長が低いとされます。大人の身長でいうと、現在の日本人成人男子の平均身長は170.4cm、−2SDの成人男子は大体158cm、成人女子の平均身長は158cm、−2SDの成人女子は大体148cmです。ですけれども、1年生のとき−2SDの身長だった子が成人すると、みんな−2SDの身長のおとなになるわけではありません。70% くらいがそれより大きくなっていたという報告があります。
 しかし、低身長は、それが病気によるものならば、早く発見して、治療できる病気であれば、早く治療して、身長を改善することが望まれます。病院での検査、治療の対象になるのは、病気による低身長が疑われるときです。ところが、実際には、3歳児健診な どで、身長が低いと指摘されて病院で検査しても、病気や原因がみつかるのは、10%くらい、治療の対象となるのは、5〜6%くらいです。
 多くは特発性(低身長であるけれど、特別な病気はみあたらない)、あるいは家族性低身長(両親も低身長だが健康)ということになります。体質性低身長の場合は、原因によっては、治療できることもありますが、原因のわからないこともあります。出生体重が小さく生まれても、半年くらいで、平均に追いつけば(キャッチアップ)問題ありませんが、2歳頃までに身長や体重が標準近くにキャッチアップしない場合、体質的に小柄なため、小さく生まれたと考えられることもあります。

○栄養と性ホルモン

 大きく生まれた赤ちゃんでも乳児期に病気や、ミルク嫌いなどで十分栄養を摂れずに1年たってしまった場合など、キャッチアップできずにそのまま低身長が続くことも少なくありません。一生のうちで一番よく伸びる1歳までの発育は、栄養の関与が大きいのです。
 ヒトの体の成長は、一定でなく、乳幼児期と思春期に著しい成長期があります。思春期の成長に大きくかかわるのは、男女の性ホルモンですが、4歳までの乳幼児期の成長に一番大きく影響するのは、食物から摂る栄養です。たくさん食べることよりも、主食、肉・魚・野菜等の副食、乳製品、ミネラルなどをバランスよく食べることが大切です。
 平均的な体格の赤ちゃんは1年で体重が6kg増えて9kgになります。身長については、生まれたときに50cm前後の赤ちゃんは、1年で25cm伸びます。2年目以降、体重増加は1年に2kg程度になりますが、身長は2年目に10cm、3年目に8cm、4年目に7cm伸びて、4歳で100cm前後になります。身長の高めの子も低めの子も、1年間の増え方はだいたい同じで、思春期に伸びる身長もだいたい同じといわれています。思春期の始まりは早い子も遅い子もありますが、性腺ホルモンが出始めると、身長は急速に伸びますが、骨の成熟も進んで骨端線が閉じると身長の伸びも止まります。
 体重の方は、1年生で20kg、6年生で40kgです。それ以上の年齢になると、身長から100を引いた値の体重でも標準体重よりは少し多いのです。
 病気でない場合は、体は小さめでも、成長曲線に沿った身長の伸びや体重増加があり、上向きの成長を示します。一方、標準との差が年々大きくなってゆく場合は、検査と経過観察が必要です。

○病気と低身長

 身長は、骨の先端にある細胞が増えて軟骨ができ、軟骨が骨になって伸びるものですから、骨や軟骨自体に病気がある場合や、骨の成長に影響を与える病気があれば、伸びは悪くなります。染色体上の遺伝情報の不足や、カルシウムやリンが不足する病気が直接骨の成長に影響を与えるだけでなく、重い心臓病や腎臓病、栄養吸収を妨げる腸の病気、代謝の中心である肝臓の病気などがあれば、栄養不足、酸素不足、代謝不足などが成長に影響します。また子供が成長するすべての時期に必要な甲状腺ホルモンや成長ホルモンの不足があれば、身長は伸びません。病気がなく、必要なものは食べていても、著しい愛情不足の中で不幸な気持ちで育つ子の身長の伸びはよくありません。
 こうした病気が診断され、元の病気がよくなることで成長が改善した患者さんもあります。心臓病の手術後、重症肝疾患の肝臓移植後、夜間無呼吸発作も起こる大きな扁桃腺の手術後などに、目に見えて成長がよくなりました。潰瘍性大腸炎やクローン病など消化器の病気、尿細管性アシドーシスなど腎疾患、中枢性尿崩症、萎縮性甲状腺炎による甲状腺機能低下症などのホルモン異常、脳腫瘍など、診断の難しい病気が見つかって、治療が順調に進むと成長がよくなります。
 これらの病気の発見のきっかけが、体重が減ってきた、伸びが停滞しているようだ、というお母さんの観察であったことも少なくありません。このような時、成長曲線は、体重曲線や身長曲線が、平坦になったり、垂れ下がったような線を描き始めますが、2〜3年たって初めて気づかれることもあります。

○成長ホルモン補充療法について

 わが国では、1975年から、成長ホルモン分泌不全のため低身長になっている子の治療に、成長ホルモンを使えるようになりました。ヒトの成長ホルモンは、脳の脳下垂体前葉にある細胞でつくられていますが、治療に使われる成長ホルモンは、遺伝子工学で作られています。成長ホルモンは、骨端の細胞に直接あるいは、肝臓でのソマトメジンの産生を促すことにより骨を成長させます。出生時から成長ホルモンの欠損や不足があっても、低身長は、すぐには目立たず、多くの場合は、2〜3歳以降にようやくはっきりしてきます。出生時に骨盤位で生まれた場合に成長ホルモン分泌不全が見られることがありますが、原因がわからないこともあります。ごくまれに、成長ホルモンの効きにくい体質があります。
 成長ホルモンは、脳の脳下垂体で作られていますから、生まれた後にある時期から、成長ホルモンが出なくなる原因としては、脳下垂体に炎症や、胚細胞腫、頭蓋咽頭腫、ラトケのう胞などの腫瘍ができた場合があります。成長ホルモン分泌不全が明らかにあるときは、脳のMRI検査が必要です。
 成長ホルモン分泌不全があるかどうかをみるには、脳下垂体の細胞を刺激する薬を注射して、成長ホルモン分泌反応の多い少ないをみる負荷試験を少なくとも2回行います。2回とも反応の少ないとき、成長ホルモン分泌不全があると判断します。
 治療は注射になります。不足した成長ホルモンを補充するために、1週間に3回程度から始めて大きくなるとほぼ毎日成長ホルモンの注射をします。
 さてそのようにして治療した場合、男の子も女の子も全員が、現在の平均身長である、170cmや158cmに達するのかというと、なかなか期待通りにいかないのが現状です。もともと現行の成長ホルモン療法は、ホルモン不足により伸びなかった身長をとりもどす目的であり、余分の身長を伸ばす作用はあまりありません。いままで成長ホルモン補充療法を受けた子供たちの最終身長は、全国平均値でみると、男子で160〜161cm、女子で148cm〜150cmくらいです。もちろん、それ以上伸びた子もいるし、治療平均値以下で伸びの止まったかたもいます。
 10年以上も治療を続けるかたもおられますから、治療する以上は少しでも大きくなってほしいを思いますが、成長ホルモンの作用は身長を伸ばすだけでなく、筋力や持久力、免疫を強くする等により、体調を整える効果もあります。完全欠損の場合は、成長後も少量の成長ホルモン注射を続けることが健康の維持に必要になります。
 身長は気になる時期もありますが、こころや体が健康であることは、大切な素晴らしいことです。
 れからも子どもたちの成長を見守っていきたいと思います。

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