独立行政法人国立病院機構 四国こどもとおとなの医療センター

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おひさまつうしん

特集 こどもの病気の基礎知識

vol.09 学校検尿について

 昭和48年に学校保健法施行規則が改訂され、検査項目に尿検査が加えられたことで、翌年の昭和49年度(1974年)から全国的に学校検尿が実施されるようになりました。当初は奇数年の実施でしたが、昭和54年度(1979年)からは毎年実施されています。それから30年が経過し、この普及によって無症状で経過している腎疾患が早期に発見され、治療、管理が行われています。しかし、経済効率の点や管理不要な尿異常があることなどより、近年、この学校検尿システムの意義についての再検討がなされるようになりました。

1.学校検尿により慢性腎炎の予後は改善したか?

 学校検尿が糸球体腎炎の早期発見に有用であることは、無症候性蛋白尿、血尿の症例から約60%、蛋白尿単独の症例から約1%、血尿単独の症例から約2%の割合で腎炎が発見されることから明らかです。また、小、中学生の慢性腎炎の頻度は0.05%前後と考えられていますが、約70〜80%が学校検尿で発見されています。しかし有効な治療法があって初めて有効であると評価できるものと思いますが、次の2つ疾患は学校検尿によって早期に発見された症例に対して早期に治療することで長期予後が改善されたことが報告されています。その1つは膜性増殖性糸球体腎炎という疾患で、かっては10年で75%が末期腎不全になるとされていましたが、最近の報告では平均9年くらいの経過で2.4%と激減しています。もう1つはIgA腎症という疾患です。この疾患は慢性腎炎の中でももっとも多い頻度の疾患で、10〜20年の経過で20%が末期腎不全になるとされていますが、近年ステロイド療法を中心とした多剤併用療法、扁桃腺摘出などによりその進展が阻止できるようになっています。

2.学校検尿によって腎不全に至る小児腎疾患患者数は減少したか?

 慢性維持透析を受けている患者数は毎年増加していて現在25万人を超えています。その中で小児の透析患者は、学校検尿施行開始10年目以降、新しく透析に導入されるのは年間60〜70人とほぼ一定です。この数には日米間に大きい差があり、日米間の人口の違いを考慮しても学校検尿の行われていない米国は日本の約4倍の頻度になります。また、透析導入になる元の疾患にも変化がみられます。1990年前後は慢性腎炎が全体の68.9%でしたが、その後次第に減少して1998年には34.5%になっています。対照的に先天性腎尿路疾患は7.5%から32.4%へと増加し、新しく透析に導入する疾患としては慢性腎炎が1/3、先天性腎尿路疾患が1/3、遺伝性腎症とその他が1/3を占めるようになっています。このことは学校検尿で早期発見、早期治療が可能な慢性腎炎の予後が改善されたのに伴いその比率が変化したためと考えられ、間接的に学校検尿の有用性を示しています。

3.学校検尿に医療経済的利点はあるのか?

 わが国の透析患者数は毎年約1万人ずつ増加しています。透析患者が1年間に要する費用を一人500万円とすると新しく導入する透析患者に要する医療費は500億円を超えます。一方、昭和56年の試算では同年度、全国で小学生1500万人、中学生500万人に検尿を行い約30億円を要しましたが、この額は年間に透析に移行する者において透析に入るまでの期間を2カ月延長するだけで賄いうる額であったといいます。したがって小中学生の学校検尿は医療経済的にも利点は高いとされています。

4.学校検尿に関する問題点

 蛋白尿と血尿を指標とした現行の検尿では発見が困難であり、また発見された時点ですでに腎不全になっている場合が多い先天性腎尿路疾患をどのように早期発見 するかが問題として残されています。他の項目を追加することが検討されていますが、有用性や費用の問題などで一定の見解は得られていません。また、検尿陽性者のうち医師の管理や治療が必要な腎尿路疾患が発見される頻度は10%くらいとされ、そのためこどもや家族に不安材料を提供したにすぎない場合もあることが予想されます。有所見者に対しての適正な事後措置(診断と適正な管理指導)が必要不可欠です。

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