独立行政法人国立病院機構 四国こどもとおとなの医療センター

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おひさまつうしん

特集 こどもの病気の基礎知識

vol.14 あざのレーザー治療について

当院では、平成17年5月より血管腫治療用として色素レーザーが、平成19年7月より太田母斑、蒙古斑、扁平母斑治療用としてQスイッチ付きルビーレーザーが導入されました。外来でレーザー治療を希望する患者さんを診察して気づくこととして多くの方が、レーザーが万能で魔法の機械であるように思っていることです。気になっているあざやシミがレーザーをあてるだけで、すぐに消えてしまうと誤解していると言うことです。

まず、治療する「あざ」の種類によって、使うレーザーの種類が異なります。赤あざ(血管腫)には赤あざ用のレーザー(色素レーザー)を使い、黒あざ(太田母斑や青色母斑)や茶あざ(扁平母斑)には黒あざ用のレーザー(Qスウィチ付きルビーレーザー)を使います。

<赤あざ用色素レーザー>

「赤あざ」にも大きくわけて2種類があります。一つは、生まれつきあり、赤い色だけで隆起したりはしないもので「単純性血管腫」や「portwine stain」と呼ばれているものです。通常、自然にうすくなったり消えたりはしないのですが、例外的に前額部(ひたい)中央から眉間や上瞼の内側にあるものは「サーモンパッチ(salmon patch)」と呼ばれ、2~3年の経過で薄くなったり消えることもあります。

「単純性血管腫」はサーモンパッチをのぞいて自然消退は期待できませんので、気になる場合は治療が必要になります。治療方法としては、小さいものでは切除することも可能ですが、瘢痕(傷跡)が残ります。また、以前はよく行われていたドライアイスをあてたりする方法も、やはり傷跡の問題があります。そこで、最近では色素レーザー照射による治療が、効果も治療後の傷跡についても最も優れた治療と考えられています。

当科で使用している色素レーザーは米キャンデラ製のV-beamです。この装置には冷却装置であるDCD(dynamic Cooling Device)が装着されています。この装置は、レーザー本体と連動してレーザー光が照射される直前に皮膚表面に-26℃の冷気を吹き付けて、照射される部位の皮膚の知覚を麻痺させ痛みを感じさせることなくレーザーの照射が可能となっています。この装置のおかげで以前は局所麻酔が必要であった血管腫のレーザー治療がほとんどの場合、無麻酔で行うことが可能となりました。通常、単純性血管腫のレーザー治療では、はっきりした効果が表れるまでに個人差はありますが約3回から5回程度の照射が必要となります。また、1回のレーサー照射と次の照射までは、3ヶ月程度の間隔をあける必要があります。それは、レーザー照射後の皮膚は軽い熱傷(やけど)の状態となります。その影響がなくなるまでに約3カ月程の時間が必要となるからです。

もう一つは、「苺状血管腫」と呼ばれる生後1~2週間して出てきて1ヵ月頃より急速に盛り上がってくるものです。この血管腫の特徴は個人差はありますが5~7歳までに自然に消退します。しかし、非常に大きく隆起した場合には消退した跡が瘢痕として目立つ場合があります。そこで、大きく隆起する前にレーザーを照射して早期に消退させることによって瘢痕を目立たなくすることが最近で広く行われています。当科でも極力早期に積極的にレーザー治療を勧めています。

<黒あざ・茶あざ用ルビーレーザー>

実際に当科でルビーレーザーで治療している疾患は、太田母斑、異所性蒙古斑、扁平母斑、外傷性異物沈着になります。

「太田母斑」は、出生時より顔面の片側、特に眼瞼およびその周囲に限局した黒色から暗青色調の色素斑で、詳しく言うと三叉神経という顔面に分布している神経の支配域に一致した色素斑になります。特徴的な色素斑の分布をしめしていますので、診断は比較的容易です。

「異所性蒙古斑」は、臀部や仙骨部以外の場所に発生する蒙古斑を言います。通常の蒙古斑と異なり、薄くなることはあっても完全に消失ことは難しく、乳児期からのレーザー治療が勧められています。

「扁平母斑」は、先天性あるいは後天性に生じる褐色斑です。自然に消えることはないので気になる場合には治療の対象となります。ルビーレーザーで治療を行っています。効果はありますが、再発が多く繰り返し照射の必要があります。

「外傷性異物沈着」とは、アスファルトの道路上で転倒し擦過傷(擦り傷)を負った場合、傷が治ってもアスファルトの粉が皮膚に残って黒く目立つ場合があります。以前は、手術的に切除するしか方法がなかったのですがQスイッチ付きルビーレーザーで治療することが可能です。また、よく鉛筆の芯が刺さって黒く残ってしまうことがありますが、このような場合も非常によく反応します。

<ほくろについて>

よく外来に顔の「ほくろ」をレーザーで取りたいと希望する患者さんや親御さんがこられます。一般に「ほくろ」と呼ばれているほとんどのものは実際には「色素性母斑」と言われる”黒あざ”の一種です。

この色素性母斑の色素沈着の原因は、メラニンではなく母斑細胞(ぼはんさいぼう)です。そのため、太田母斑などとは違いレーザー治療は効果がありません。手術治療が最も確実な治療です。

しかし、体幹の広範囲の色素性母斑の場合や患者本人や親御さんが手術はどうしてもしたくないが、治療をしてほしいという場合にはルービーレーザー単独、もしくは他の色素レーザーや炭酸ガスレーザーなどと組み合わせて治療を行う場合もあります。しかし、現在行われている方法では効果があったとしても多少色調が薄くなった程度の場合がほとんどです。しかも、より薄くなることを期待してレーザーの出力をあげすぎると皮膚を損傷し潰瘍を形成する危険もあります。その場合には、当初あった色素性母斑よりも醜い目立つ瘢痕(傷跡)を残す危険性が高くなります。そのため、当科では色素性母斑に対するレーザー治療は現在、積極的に行っていません。

以上が当科で行っているあざのレーザー治療の現況ですが、どのレーザー治療を受けるにしても、その後のケアが非常に大切になることを強調しておきたいと思います。

レーザーを照射した皮膚は程度の大小はあっても、軽いヤケドのような状態になり1週間程度の処置が必要になります。もちろん、適切な処置を行っていれば問題なく治りますが、不十分な処置をしていると傷が深くなって瘢痕(傷跡)を残す結果になります。

また、ヤケドが治った後も約3ヵ月程度の遮光のケアが必要となります。このような後療法をふくめてレーザー治療となるのです。このことを十分に理解して上でレーザー治療に望んで欲しいと思います。

「あざ」のレーザー治療と一口で言っても、非常に複雑です。実際に診察をさせていただき、十分に説明を聞いたもらった上で治療を受けて頂かないと想像と違う結果になりかねません。一度、形成外科外来におこしください。ただ、外来患者さんは非常に多いので、待ち時間が多少長くなることはご容赦ください。

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