独立行政法人国立病院機構 四国こどもとおとなの医療センター

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おひさまつうしん

TOPICS

タイで開催された 第17回全国小児科学会
へ出席しました

2016/06/22〜06/24

 四国こどもとおとなの医療センターは、タイ王国(以下、タイ)の唯一の国立小児病院である、シリキット王妃祈念小児病院と姉妹提携を結び交流しています。その一環として、今年は2016年6月22日から24日までの3日間、当医療センター院長・医師・看護師・看護教員・研究員の計7人が、シリキット王妃記念小児病院主催の第17回全国小児科学会に出席しました。

 今回アジアでの学会出席が初めてだったメンバーも多く、学会会場に足を踏み入れた瞬間にまずカルチャーショックを受けました。おそらく多くの日本の医療関係者が抱いているイメージとは非常に異なるものであったからです。開会式は、子ども達によるピアノ演奏で始まり、小児医療学会らしい大変微笑ましいオープニングとなりました。また、タイの厚労大臣や歴代の小児病院長も出席し、挨拶がありました。会場ではタイ国内の発表以外は、基本的に英語が使用され、タイの研修医をはじめとする多くの発表者も流暢に英語で発表していました。

 当医療センターからは中川院長、近藤医師、森研究員が講演し、森看護師長によるポスターセッションでは、活発な質疑応答が行なわれました。近藤医師の「日本の学校検尿システムと小児の慢性腎臓病」についての講演は、現在東南アジアで力が注がれている感染症対策を始め、心臓病、内分泌・代謝疾患、腎臓病などの小児慢性疾患も今後の課題として注目されており、スクリーニングや治療に関する質問も多く、他のアジアの医療人も興味深く聴講していました。


 懇親会では、タイの小児病院の医師とお話をしながら、美味しいタイ料理をいただきました。またタイの伝統的な踊りを主催者の方々から教わり参加者全員で踊るなど、アジア諸国の方々との文化交流として大切な機会でした。今後も当医療センターの研修医や若手の医師・看護師が中心となりアジア医療ネットワーク構築に貢献できるよう努力する必要があります。なぜなら、日本よりも急速に医療の進歩を遂げている東南アジア諸国の医療現場で、我が国の医療機関が先進的な役割を推進し維持するために、現在の診療レベルを「いかに向上させるのか」を常に考え実行しなければ、その役割は十分に果たせないと「危機感」を抱いたからです。

 学会の最終日には、シリキット王妃記念小児病院を視察しました。バンコク市内の中心地にある病院は、新築された24階建てのツインタワーの新病院に移行している最中でしたが、外の街の雑踏を感じさせない優しい雰囲気でした。訪問時は診察時間外にもかかわらず、受付や待合室には非常に多くの人がいて、さすが800万以上の人口を有するバンコク随一の小児病院だと思いました。小児科の研修医だけで毎年20人以上在籍しているということでしたが、それでも医師が不足している印象でした。

 視察ではCT検査室やICU、NICU、心カテ室、一般病棟など増築した新病院を含め、全体を見学しました。色々と質問をしたり、逆に質問を受けたりしながら、日本の医療との共通性と相違を知り、お互いの興味は尽きませんでした。国や文化は異なっても、医療従事者として、人々の健康を願う思いは同じなのだと再確認しました。建物というハードが完成して、今後数年のうちにはソフトとしての医療機器も充実されると思います。医療レベルの向上とともに東南アジアの小児医療の拠点となる病院だと確信しました。


 日本の病院と同じように、建物のあちらこちらに子どもたちやその家族が安心して医療を受けることができる工夫がちりばめられ、私たちの目が引きつけられました。壁には海をイメージしたアートが描かれ、カテーテル室入り口には遊園地に来た気分になるオブジェがあり、大人の私たちも感動に浸りながらの視察でした。1階の吹き抜けの空間には、家族のために祈りを捧げる祭壇がもうけられ、タイ国の人々の信仰心や日常生活に宗教が根付いていることが伺えました。祈りを捧げる母親の後ろ姿から、子どもの健康を願う親の気持ちは万国共通であることも実感しました。院内では子どもを連れて行き来する家族や、廊下で泣いている子どもの姿など、日本でも見慣れた光景もありますが改めて子どもや家族を取り巻く環境がいかに大切であるかを痛感しました。


 古い建物と、それにつながるように新しい建物が増築されて、驚いたのは病院の建築にかかる費用は、多くの国民の気持ちのこもった募金が投入されていることでした。それだけ地域から期待されている病院であるということと、その期待に病院の医療や看護が応えていると実感しました。病院の歴史の中で構築してきた信頼性は、院長先生はじめ多くの職員の方々の、子どもたちとその家族の健やかな健康と幸福を願う気持ちに支えられているのではないかと思いました。

 海外の病院を訪れるのは3回目という看護教員も、「日本と変わらないくらいの高度な医療が提供されているのを見るのは初めて」と、日本でイメージしていたものとは異なり、非常に洗練されている印象を受けました。看護師たちは、昼夜を問わず懸命に患児と向き合っている様子でしたが、看護師長はいろんな疾患の子どもたちが入院してくるので、とても忙しいと溜息をついていました。重症の患児さんにあたたかく声をかけたり、そっとタオルケットをかけたりする姿には、やはりそこに看護の心があることを垣間見ることもできました。

 今回の経験で改めて見つめ直したのは、どこの国でも医療や看護のあり方は同じであるということです。その国の歴史や文化や生活様式により、そこで暮らす人々の価値観には相違がありますが、医療者として患者や家族と向き合う際、必ずそこに無条件で存在すべきものは患者や家族を思う人間としての温かい気持ちだということです。

 学会それから病院、そこで行われている医療、全てにカルチャーショックを受ける程、日本にいる間に思い描いていたタイとは全く違ったことに感動の連続となった今回の視察でしたが、文化もまた素晴らしいものでした。タイ料理も、辛い!というイメージでしたが、決して塩分が多いわけではなく健康的な食事です。特に、「タイすき」は今回の参加者のお気に入りで、魚介類や野菜をおいしくいただけました。食材が非常に豊富なことに驚きました。更に、タイ式マッサージも経験することができました。実際に医療にも導入されているマッサージです。筋肉痛だけでなくストレスを抱える方など心身の疲労を抱えている方には、非常によい医療資源だと思います。この他、タイには歴史的な観光資源も多く、再び訪れる機会があれば、バンコク郊外の歴史記念物も見学したいと思いました。

 当医療センターでは、毎年アジア国際小児医療学会(AMCCH)を開催しております。2016年5月26日〜28日にはアジアから11カ国の医療人が集まりました。国際協力機構(JICA)の草の根技術協力事業からの研修生の参加もあり、タイ王立シリキット王妃祈念小児病院との交流は今後も続いていきますので、来年以降も多くの方にご参加いただきたいと思います。

小児腎臓内科医長
副看護部長
教育主事
臨床研究部

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